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願いがいつか叶うまで

ひとりじゃない

今年は新しいGⅠができます!!(大阪杯編)

 中央競馬の最高峰がGⅠ(ジーワン)競走です。平地(ひらち)競走、つまり障害競走ではない競走のGⅠレースは、去年までは全部で22競走でした。しかし、今年大きな動きがありました。『大阪杯』と『ホープフルステークス』が、新たなGⅠとして設けられることになりました。

 

 中距離適性を持つ一流馬の国内の春季競馬における出走機会を拡充し、お客様により魅力ある競走を提供するため産経大阪杯[2,000m芝]をGIIからGIに昇格いたします。
なお、競走名については、大阪杯(GI)といたします。

JRA公式サイトのニュース:2016年11月16日付 より引用、下線部引用者)

  長年『産経大阪杯』として親しまれていたGⅡ競走を、競馬場・距離はそのままに、『大阪杯』というGⅠ競走に昇格させた、ということです。

 

天皇賞・春の憂鬱

 これには歴史的背景があります。古馬(4歳以上の馬、旧表記では5歳以上)の頂点を決める別格の競走は、春秋の『天皇賞』(ルーツは戦前の『帝室御賞典』)でした。1984年の番組改革による『天皇賞・秋』の距離短縮まで、長らく『天皇賞』は、春秋ともに3200メートルで行われていました。しかしながら、84年の『天皇賞・秋』の距離短縮により、春に京都競馬場で行われる『天皇賞・春』が取り残されるかたちとなりました。すなわち、「古馬しか出走できない(『天皇賞・秋』は後に3歳馬〈旧表記では4歳馬〉が出走できるようになった)」「3000メートル以上のGⅠ競走」が、『天皇賞・春』だけになったのです。

 

 

 これは、平成元年から平成14年(2002年)までの、『天皇賞・春』の勝ち馬一覧です。メジロブライト以外は複数GⅠを勝利しており、なおかつメジロブライトサクラローレル以外はGⅠを3勝以上しています。言わば名馬中の名馬といったところが名を連ねているわけです。

 2003年の勝ち馬ヒシミラクルも、生涯でGⅠを3度優勝したミラクルな馬です。しかし、私の経験を頼らせていただくと、この年(2003年)から、『天皇賞・春』の様相が変わってしまった印象が強いです。ネガティブにいうと、レースの価値が低下してしまったのです。

 

 さきほどヒシミラクルはGⅠを3勝もしたミラクルな馬だと書きました。しかし、この馬は、菊花賞を10番人気(36.6倍)、天皇賞・春を7番人気(16.1)、宝塚記念を6番人気(16.3倍)で勝った、いわば人気薄でGⅠを勝ち続けた馬でありました。

 

 競馬ファンの方は、ヒシミラクルが勝った天皇賞・春の1番人気馬を覚えていらっしゃるでしょうか? ダイタクバートラムという、クラシック競走に出走したことのない、GⅠ競走未勝利の「上がり馬」が、このレースの1番人気でした。しかも単勝オッズは2.0倍です。支持率40%。2番人気のツルマルボーイが6.9倍でしたから、抜けた1番人気でした。

 さてヒシミラクルが勝ったこのレースの1番人気ダイタクバートラムは3着に敗れました。ダイタクバートラムがその後どうなったかというと、結局GⅠをひとつも勝てないまま引退してしまったのです。

 

 誤解を恐れず言うならば、2003年から、天皇賞・春の出走馬レベルの低下が顕著になって来ました。イングランディーレ(2004年)・スズカマンボ(2005年)・アドマイヤジュピタ(2008年)・マイネルキッツ(2009年)・ジャガーメイル(2010年)・ヒルノダムール(2011年)・ビートブラック(2012年)、これらの優勝馬は、この1回きりしかGⅠを勝てずに引退しました。

 

 ただ、フェノーメノは2013年と2014年にこのレースを連覇、2015年の勝ち馬ゴールドシップは通算GⅠ6勝、2016年の勝ち馬キタサンブラック(現役)は現在G1を3勝ーーと、ヒルノダムールが勝った2011年以降は、メンツが揃ってきた印象、持ち直した印象があります。

 

 それでも、やはり菊花賞(3000メートル)やステイヤーズステークス(GⅡ。3600メートルの平地最長距離競走)、ダイヤモンドステークス(GⅢ。3400メートル)に出走したことのない馬の陣営にとっては、超長距離の3200メートルGⅠにいきなり挑戦するのは「ハードルが高い」でしょう。

 いま、あえて「超」長距離と書いたのは、世界の競馬の主流が、2400メートル(クラシック・ディスタンスと呼ばれます)から2000メートル前後に移行しつつあるからです。

 この流れを受けて、かなり前から、「天皇賞・春を2400メートルにしてはどうか?」という議論が水面下でなされていました。水面下で~云々と、ぼかした言い方にしたのは、主に2ちゃんねる競馬板で、毎年必ずそういう主旨のスレッドが立っていたからで、例えば『週刊競馬ブック』や『競馬最強の法則』で、こうした論が盛んに出ていたかどうかは定かではありません。

 ただ、ひと昔前の2ちゃんねる競馬板は、今に比べると格段に人口が多く、少なからず競馬ファンに影響を与えていたことを否定できません。そうでなければ、柴田善臣騎手のことを競馬場で「先生」と公然と言ってみたり、「ヨシトミはどうせ4着だよ」という言葉が自然と出てきたり、「溜め殺し」という俗語を某ラップ予想家半笑いが自著で記述したり、そんな現象が起こるのはありえないでしょう。「天皇賞・春を2400メートルに短縮せよ」という議論があった、という認識は、わりと競馬ファンに共有されていたのではないでしょうか。

 

 2000メートルのGⅠ

 話を戻しましょう。結局、天皇賞・春は、3200メートルで据え置きになりそうです。英国で『セントレジャー』(日本の菊花賞はこれを範としています)という競走が地盤沈下している状況とは反対に、日本競馬は日本競馬の「美点」として、伝統と格式の3200メートルを維持していく、という意思表示でしょう。

 でも、それならば、現代型の2000メートル前後を得意としている中距離馬はなおさら困ります。ウオッカダイワスカーレットブエナビスタジェンティルドンナといった「名牝」は、いずれも2000メートルのGⅠを勝っています。特に、ウオッカの現役時代を知っている方ならば、あの馬が京都芝3200メートルを走ることなど考えられないでしょう。世界的名馬のジャスタウェイとモーリスも2000メートルの天皇賞・秋を勝っています。そしてこの2頭は、どちらかというとマイラー(1600メートルを得意とする馬)寄りでした。三冠馬オルフェーヴルはもちろんのこと、あのゴールドシップですら2000メートルのG1を勝っています。

 こうしてみると、近年の強い馬で、2000メートルのG1を勝っていないのは、エピファネイアキタサンブラックぐらいではないでしょうか? サトノダイヤモンドがこの先どうなるのかは、わかりません。ですが、例えサトノダイヤモンド天皇賞・秋に出なかったとしても、勝てる能力があることは明らかです。

 

 サトノダイヤモンドキタサンブラックの動向

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 どうやらサトノダイヤモンド阪神大賞典で復帰するようです。そして、キタサンブラックはGⅠとなった『大阪杯』で復帰するようです。ただ、キタサンブラックが予定しているローテーションは、実は昨年と全く同じです。大阪杯が格上げされただけです。

 

 アンビシャスに”福音”

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 この記事を書いているのは、2月26日です。きょう、アンビシャスという馬が、『中山記念』に有力馬として出走します。

 実は、アンビシャスは、去年の『産経大阪杯』の勝ち馬です。つまり、GⅡ時代の大阪杯の最後の勝ち馬です。そしてアンビシャスは、去年も中山記念を使われてから産経大阪杯に出ました。つまり、なんのことはない、アンビシャスにとっては、去年と同じローテーションを歩むだけ、違うのは、『大阪杯』がGⅠに格上げされること。そしてアンビシャスにとって最も重要なのは、大阪杯がGⅠになる」という事実です。この馬は、まだGⅠを取ったことはありません。GⅠを取れる取れると言われながら、まだ取れていないのです。音無秀孝調教師も、「適性に合うGⅠが春競馬にない」ということをボヤかれていた記憶があります。アンビシャスにとっては、千載一遇のチャンスです。

 そうです、まさにアンビシャスのような馬を「救済」するための受け皿として、大阪杯はGⅠに昇格したのだと思います。

 

 

追記:アンビシャスは4着でした