願いがいつか叶うまで

ひとりじゃない

1984年のフジテレビとフジ系アニメ(後編)

 いよいよ84年のフジ系アニメについて述べる。

 

OKAWARI-BOY スターザンS(1月7日~8月25日)

『スターザンS』は、「すたーざんす」と読む。

未来警察ウラシマン』の後番組であり、タツノコプロのオリジナル企画である。タイトルに見られるとおり、「ターザン」をモチーフにしており、そこにSF要素をミックスしていた。

 ところでこのアニメのOP映像は割りとカッコイイのだが、特にスタイリッシュなのは、終わりの部分で主人公とヒロインが空に向かって飛んでいくカットである。ケレン味のある作画だ。他のアニメのOPでも、こういう動きを取り入れてほしいと思う。

牧場(まきば)の少女カトリ(1月8日~12月23日)

 かつて僕は、このアニメの読みを「ぼくじょうのしょうじょかとり」と勘違いしていた。正しくは「まきば」である。オタク中級者が陥りやすいミスとして知られている(?)。

世界名作劇場」枠の作品で、『小公女セーラ』の前番組である。

 フィンランドを舞台としているため、シベリウスの楽曲が作中で用いられている。貧しい祖父母の家で暮らす少女カトリが主人公の物語である。

 わざわざ『小公女セーラ』の前番組と断っておいたのは、どうも『南の虹のルーシー』からこの作品までの3作品が、名作劇場の中ではマイナーな感触があるなあ……と思ったからだ(『フローネ』は衛星アニメ劇場でやっていたからね)。

GU-GUガンモ(3月18日~翌年3月17日)

 前番組に続き細野不二彦原作の漫画がアニメ化された。ただし、制作は天下の東映動画にチェンジしている。

「カリスマ」の異名を持つアニメーター・井上俊之が頭角を現した作品として作画ファンには有名である。

 僕、ガンモ。トリであって、トリでなく、人語を解すけれど、ヒトでもない。誰が呼んだか鳥類のニューウェーブ。ニワトリモドキ、ガンモドキ。醜い、ヒヨコの子の僕は、家庭の事情から放浪の旅へ。 (東映アニメーション公式ページより引用)

オバケのQ太郎』や『ドラえもん』を彷彿とさせる物語設定なのだが(人外の主役キャラとパートナーの少年)、藤子アニメよりも存在感が薄い感じが否めない。というより、細野不二彦が過小評価である、と考えたほうがいいのかもしれない。

 後番組は『タッチ』。細野不二彦作品が次にテレビアニメ化されるまで13年半を要した(『どっきりドクター』)。

らんぽう(4月5日~9月27日)

 wikipediaでアニメ版『キャプテン翼』の項目を見ていたら、こんな記述が見つかった。

 テレビ東京は、当初『キャプテン翼』の枠では、『らんぽう』を放送する予定だった。しかし、編成部長の強い主張により、急遽『らんぽう』の開始を取りやめ、『キャプテン翼』を1983年10月から放送開始させた。

 このことは、wikipediaによると、当時の編成部長(金子明雄氏)が自らの著作で言明しているそうな。つまり、『キャプテン翼』が放送されず、テレ東系アニメとして『らんぽう』が83年に放送開始されていた可能性があるということだ。

 それはさておき、『らんぽう』は『キャプテン翼』の半年後、フジテレビ系の木曜19時前半枠で放送が開始された。一言付け加えておくと、当時のこの枠はいわゆる「ローカルセールス枠」であり、一部放送局では番組が差し替えられていた。もう一言付け加えるならば、当時はテレビ局の数が今より少なく、ゆえに「クロスネット」という体裁をとる局が多かった。異なる系列の番組が同じチャンネルに混在していたのだ。それゆえ『らんぽう』の放送が取り下げられるということもあった。

 原作は「週刊少年チャンピオン」に1978年から連載中だったギャグ漫画である。単行本が全37巻だというから、当時としてはかなりの長期連載作である。

 ちなみにオープニングテーマは、主演・らんぽう役の坂本千夏の歌唱である。

 影が薄いアニメだったのか、全20回と放送回数が少ない(一部地域では全21回)。このアニメの後番組が『北斗の拳』である。

チックンタックン(4月9日~9月28日)

 原作は石森章太郎が学研の教育雑誌に連載していた漫画作品。制作会社はスタジオぴえろであった。

 この年の4月、『うる星やつら』の制作がスタジオディーンに変わった。ぴえろのフジテレビ系での枠は、『うる星やつら』から『チックンタックン』に移行することになった。

 スタジオぴえろはTVシリーズの元請け制作を始めてから5年目であり、新興の制作会社だった。もっとも、ぴえろタツノコプロ出身者が主力スタッフだったので、タツノコの後継会社だと言えないこともなかった。そういう意味では、『ニルスのふしぎな旅』(鳥海永行)『うる星やつら』(押井守)の時点で、制作体制は整っていたといえる。

 見た目にも楽しいメカや登場人物、あらゆることが可能になるという不思議な事典が引き起こす奇想天外な事件の数々、遊び心の効いた楽しさいっぱいのファンタジーギャグアクション。(ぴえろ公式より引用)

 主人公のチックン・ダックは、「ダック」という名前の通り、アヒルのような外見をしている(ただし肌は青く、この姿は、いわゆる世を忍ぶ仮の姿……である)。

 第11話までは月曜のゴールデンタイムで放送されたものの、第12話からは枠移動し、金曜夕方の放送となった。全23話と、この時代のテレビアニメでは比較的話数の少ない作品であった。

ふしぎなコアラブリンキー(7月7日~12月28日)

 84年はコアラ・ブームに沸いた年であった。他局では『コアラボーイ コッキィ』が放送され、コアラアニメが複数放送されていた時期があった。ロッテが「コアラのマーチ」を発売したのもこの年だ。

 フジテレビ系で放送されていたコアラアニメは、『ふしぎなコアラブリンキー』である。当初の枠は、土曜18時台前半であった。これは先に触れた木曜19時台前半枠と同様、「ローカルセールス枠」であり、一部地域では別番組を放送していた。『あした天気になあれ』開始のため、秋の改編で金曜の17時台に枠移動し、12月に終了した。

 超能力を持っているが、水をかぶるとぬいぐるみの姿に戻ってしまう、まさに「ふしぎな」コアラ・ブリンキーが主役のファミリーアニメである。

(参考サイト:ふしぎなコアラ・ブリンキー | 作品紹介 | NIPPON ANIMATION

銀河パトロールPJ(7月17日~8月22日)※日仏合作

 エイケンが、フランスとともに制作したSFアニメ。エイケンで宇宙SFものというのはちょっと珍しいかもしれない。

 キャラクターデザインをフランス人ルネ・ボルグが担当している。音楽を担当したひとりであるミシェル・ルグランは、フランスの有名な映画音楽作曲者。

 日本では、84年の夏期に、平日早朝(6:00~)に放送された。つまり、日替わりアニメである。放送期間は、ほぼ学校の夏休みと重なっている。

よろしくメカドック(9月1日~翌年3月30日)

OKAWARI-BOY スターザンS』の後番組。タツノコプロとしては珍しい少年漫画原作アニメである。

「それまでのスーパーカーや荒唐無稽な設定のレースものとは違い、国産市販自動車のチューニングを扱った草分け的な作品である」とWikipediaには書かれている。たしかにオープニングテーマで『チューン』が繰り返し出て来る通り、レースとともにチューニングが大きな主題となっている。

 僕はこのアニメをAT-Xの再放送でちょくちょく観ていた。とある回で物凄いカーアクション作画があったのを強烈に覚えている。車の試乗パートで発せられるセリフから、「カーグラフィックTV」を想起させられるということもあった。

 主演は橋本晃一。80年代の少年ジャンプ原作アニメを語る上で欠かせない声優である。

 全30話と中途半端な話数で終了している。サブタイトル表を見るに、打ち切り同然の終わり方だったのだろう。惜しいアニメだった。

ふたり鷹(9月27日~翌年6月21日)

 原作は、「週刊少年サンデー」に連載されていた新谷かおるの漫画。バイクレースを主題としている。たしか、OPで実写のバイクレース映像が挿入されていたと思う。

 放送枠は、木曜19台後半。しかしながら2クール目からは金曜夕方に移動、3クールからは金曜夕方の16時台に放送枠がせり上がってしまった。

 制作会社・国際映画社の倒産という致命的な理由により第36話をもって終了。いろいろと受難のアニメであったかもしれない。

森のトントたち(10月5日~翌年3月29日)

 恥ずかしながら、わたしはこのアニメの存在を一週間前に知ったばかりです。

 フィンランドの伝承が大もとらしい。「サンタクロースはクリスマス以外のときにはどうしているのか」が作品の根幹Wikipediaより引用)で、主人公のサンタ「ヨウルプッキ」はフィンランド語で「サンタクロース」の意味。そういえば、この年の世界名作劇場牧場の少女カトリ』もフィンランドが舞台である!

 作品に関する情報は少ない。金曜17時台後半枠の放送だったらしい。半年で終了(全23話)、全話を収録したBOXの類は発売されていない。

あした天気になあれ(10月6日~翌年9月20日)

 原作は、ちばてつやが「週刊少年マガジン」で連載していたゴルフ漫画である。数あるゴルフ漫画の中でも代表作のひとつであり、「週刊少年マガジン」の看板漫画であり、当時としては異例の長期作品(1981年から1991年まで。単行本全58巻)であった。僕はこの漫画を子どものころ全編読んだ。繰り返し読んだ。『プロゴルファー猿』とこの作品を小学生時代に読んでいたおかげで、無駄にゴルフの知識がある。

 アニメ版は影が薄かった。「明日はシャイニング・スカイ」というOP主題歌からして、なんだかピントがずれている気がする。偶然僕は地元のレンタルビデオ屋でこのアニメのVHSソフトを見つけたことがある。しかし、どうにもこうにも漫画版に比して影が薄いのだ。放送枠(土曜18:00~)は「ローカルセールス枠」であり、厳しい条件を強いられていた。それでも、枠移動が一度ありながらも約1年間放送が続いたのは立派であった。

 それにしたって、10年以上も連載を続け「マガジン」の軸となっていた原作漫画と比較すれば、不遇中の不遇アニメといってもいい。個人的には、「たしかにアニメ向きの題材ではないかもしれない」と思っていたのも事実である。

北斗の拳(10月11日~87年3月5日)

  おそらく、この年開始のフジテレビ系アニメで最も有名な作品だろう。

 原作は、武論尊原哲夫コンビの、「週刊少年ジャンプ」で連載されていた世紀末格闘バトル漫画。

「お前はすでに死んでいる」「ひでぶ」「あべし」など数々の名台詞を生んだ作品であるが、こういったフレーズを国民に定着させたのはアニメ版の貢献も大きいだろう。

 主人公のケンシロウ役は神谷明である。キン肉マン、冴羽獠とともに、彼の80年代における代表作のひとつである。

 主題歌の「愛をとりもどせ!!」はクリスタルキングの楽曲。最初は「アニソンなんて……」と思っていたらしいが、この曲が『北斗』を代表する主題歌となり、近年パチンコ版の人気によりさらに楽曲の存在感が増しているので、クリスタルキングは単なる一発屋の殻を破ることができた。

 親から「見てはいけない」と言われた番組の代表格として知られている。しかしながら、視聴率は現在のテレビアニメ番組の大半よりも高く、『北斗の拳2』を含めると約3年半に及ぶ放送を持続できたのは、人気の裏付けがあったからにほかならないであろう。