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願いがいつか叶うまで

ひとりじゃない

五七五七七(4)

さきたまの 武蔵の森の 原っぱに バスローブだけ 巻いてうつ伏せ

キュウリ売り 浦和の路を 練り歩き 駄菓子屋に咲く アカシヤの花

大宮の 時計の針を 確かめて 乗り遅れるな 乗り遅れるな

大宮の 時計の針を 確かめて 百貨店だけ ぶらぶら歩く

さきたまの 西武の園の 円環に 僕一人だけ 叩きつけられ

豊島園 飛び散る飛沫 水の音 帰路の車内は あきらめの色

 

 

一義性 きらって寄越す 原稿を 突き返すのは 誰の多義性

一義性 きらって渡す 原稿を 突き返される 多義性の春

一義性 きらって出した 原稿を 処分するのは 誰の多義性

人類の 全体的な 幸福を 願い乞うのは 誰の恣意性

東北の 陽が落ちていく 境目を 想い起こして 坂出を発つ

まっすぐに 瀬戸大橋へ 眼差しを 向けてサヨナラ 初恋の人

小豆島 幻に似た 夢景色 一筆描きの 瀬戸の花嫁

倉敷の 川の雀を 見下ろして 思いを馳せる 児島競艇

倉敷の 美観の空に シャボン玉 紅茶を飲んで 新聞を読む

大原の 画の額縁が 輝いて 真っ赤に照らす 瀬戸の花嫁

広島の そごうの夢も 過去になり よすがの空は バスターミナル

広島の 車通りの 騒擾を 忘れていない 二十八でも

広島の 都会でこその 騒がしさ そこから逃げる アストラムライン

松山で 湯呑みを割った 宿命を 此処に持ち越す 東京大学

松山の 湯船に浸かり 溺れるる 四国は総て 掌のなか

松山を 発って宿無し 同窓生 放逐された キュビスムの寮

松山で 天ぷらそばを 食いまくり 腹を壊して 新居浜に行く

バルザック 読みつつ大江健三郎 右手に積むは マラルメの塔

万葉の 花咲く色を たしかめて 認めてみる 二十五の胸

万葉の 花咲く色を したためて 手紙を送る 彼はきみ色