願いがいつか叶うまで

ひとりじゃない

五七五七七(3)

焼飯の 薫り漂う 台所 家族で囲む 土曜の午餐

焼飯の 薫り漂う 台所 わたしの夢は 一家団欒

焼飯の 薫り漂う 台所 仄かに見えた 祖父の幻影

焼飯の 薫り漂う 台所 栞を挟む クロースの本

焼飯の 薫り漂う 台所 十五の春は 木漏れ日の春

焼飯の 薫り漂う 台所 未だ帰らぬ 平屋の我が家

焼飯の 薫り漂う 台所 ああ妹よ 許しておくれ

焼飯の 薫り漂う 台所 教科書を投げ 皿をむさぼる

 

銀幕に 吸い込まれつつ 幾星霜 最終上映 滅びの美学

松竹の 小さな箱は とむらわれ 僕の根城に 消えた銀幕

駅前の 斜陽に消えた ロードショー 寂しい背中で ビビンバを喰う

駅前の 斜陽に消えた ロードショー マクドナルドで 契りを交わす

駅前の 斜陽に消えた ロードショー 米子の夜が 早めに落ちる

駅前の 斜陽に消えた ロードショー 米子の夜は 黒マッチ箱

駅前の 脇を突き抜け 夢道路 しじまの夜は 味わい深し

大丸の 跡形もなく 大通り 歩いて思う 家族のこれから

大丸の 跡形もなく マッチ箱 米子の午後は まっすぐ暗む

商店街 斜陽に満ちた 模型屋に 「売ってくれよ」と 静かにせがむ

 

スルメだけ 噛み締めながら 盛り塩で グイグイと飲む 伯父に呆れる

塩だけが 酒の肴と 決めつけて 相も変わらず 頭を垂れる

海苔を焼く 東部の浜辺 はちまきを かたく結わえた 大漁気取り

網を投げ 稚魚のざわめき 耳に入れ やおら醤油と ワサビをせがむ

手の中に 短波ラジオを 握りしめ 小船で鳴らす 気象通報

 塩辛を 旨いと思う わが味覚 三十路迫りて 軟弱になり

大広間 刺身の島を 眺めやり 「無礼講だ」と 言わない誰も